モネの「睡蓮」の中にヒツジグサは描かれているのだろうか…?

モネの「睡蓮」の中にヒツジグサは描かれているのだろうか…?

 

クロード・モネの「睡蓮」画群の中にヒツジグサ(羊草)は描かれているのだろうか…?

多分描いていないだろう。なぜなら、それは日本原産のあまりにも小さい睡蓮だから。とにかく目立たない。睡蓮の中でおそらく最も小さい種だろう。派手さがまるでない。深く、大きな池に咲きにくく、育ちにくい。雑草のようでさえある。明日にも水がなくなりそうに見える(実際なくなることもある)湿地に守られもし、適応してきたからに違いない。睡蓮の原・原種の一つであると思える。似たような睡蓮は世界中にあったに違いないが、地球の、気候の変動によって偏在と特化(変異)が進んで、多くは消えたのだろう。

モネは温帯性睡蓮を愛していたようだが、現代では、美しく晴れやかな、絢爛を誇る熱帯性睡蓮がもてはやされている。
草津市立水生植物公園「みずの森」は睡蓮の原種育成・勾配種の研究・展示では日本屈指を誇る施設のひとつである。研究員(職員)の努力と貢献は高く評価したい。とにかく、原種をはじめ多種多様の美しい睡蓮に出会える。

 

梅雨。
滋賀・山門湿原近くの水たまりに幾輪かのヒツジグサが咲いていた。「こんなところに咲くんだ」という小さな衝撃は、国が管理する区域のみすぼらしさに比べてあまりにも清新だった。黄イトトンボが何匹も飛び交い、休息していた。その体長はヒツジグサの花より少しだけ小さい。

草津市立水生植物公園「みずの森」のヒツジグサがヒツジグサでない訳がない。同じだ。それがあたりまえなら、同じように人知れず咲く原生のヒツジグサにもっとやさしくしてあげられてもいいのではないかと… 気づく。